
ヒト幹細胞培養液って効果はあるの?

細胞培養をする研究員としては、化粧品に配合されているものついては一般に言われるような、画期的な効果があるか疑問に思っています。
幹細胞培養液には、成長因子やサイトカイン、SOD活性物質や、ヒアルロン酸やコラーゲンなどを含んでいるとは思いますが、熱に弱いものも多いんです。
化粧品を製造するときは、熱をかけて製造することがほとんど。
そのときに成分の活性を失ってしまうことが多いはず。
その他にも、細胞を培養するときには肌に不要な成分も出します。
そういった成分を選択することなく、化粧品に使用できるの?という疑問は常に感じています。

そうなの?

試薬レベルで取り扱う場合には、凍結乾燥したものを使用するときに培地に溶解するなどして使用します。
ですから長期間保存することで、活性も失われていまうことがわかっています。
ヒト幹細胞とは
ヒトの細胞はよく出来ていて、幹細胞と言われる細胞の赤ちゃんのようなものが、体内物質の刺激を受けることで、身体を構成している細胞へと成長します。
これが細胞の分化と言われているもので、どのような刺激を受けるかで成長する細胞が変わってくるのです。
細胞培養をするときは、細胞を刺激する物質を使い分けることで分化させていきます。
細胞の赤ちゃんのようなものが幹細胞と言われるものなので、何となくイメージは良く感じますよね。
ヒト幹細胞培養液とは
細胞培養をするときは、それ専用の培地を使用して培養していきます。
この細胞用の培地が肌にどのような影響を及ぼすのかがわからない点と、細胞を培養すれば当然のように老廃物となるような肌に不要な成分も培地の中に排出されています。
ヒト幹細胞培養液とひと言で言われても、こういった細胞培養培地の成分や、不要な成分が除去されたものかどうかが不明であるというところも不安がのこるところです。
ヒト幹細胞培養液の成長因子やSOD活性物質
成長因子などは試薬でも販売されています。(研究室向け)
こういった酵素や成長因子は、凍結乾燥という手法を使って保存が可能な状態にしてあります。
凍結乾燥とは、水分を凍らせて乾燥させることで酵素や成長因子にダメージを与えることなく活性を一時停止することができます。
いわば休眠状態にしてあげることで、流通できるようにしてあげた状態。
でも、培地など水分に溶解することで凍結乾燥という手法で休眠にした酵素や成長因子が活性を取り戻すことができます。
でも、一度休眠から起こした酵素や成長因子は、常温で保管していくとその力を使いきりやがて活性を失っていきます。
活性を失う速度は、24時間持つかどうかというところ。
化粧品の使用期限が3年で常温保存のものがほとんどです。
特殊な容器で、酸素にふれないような設計をしてあったり(完全に密閉)、冷凍(ー40~80℃)で保管でもしない限り、酵素や成長因子の活性は失われていると考えられます。
また、化粧品の製造のときは乳化をさせたりするために熱をかけながら撹拌するのですが、酵素や成長因子は熱をかけると活性を失ってしまいます。
成長因子もタンパク質ですから、卵が固まるのと同じように、熱をかけると変性して活性を失うので、製造方法も重要なファクターとなります。

つまり、ヒト幹細胞培養液は取り扱いが難しいはずなんです。
化粧品に配合されているものは、本当に一般に言われているような画期的な効果を発揮することはないのでは?と思っています。
ヒト幹細胞培養液の取り扱い方法
・熱:NG
・水分と一緒に保存:長期保存不可
・常温保存不可:基本的には‐40~80℃で保存
これが基本的な取り扱い方法になります。
化粧品では活性を保ちながら長期保存をするのは難しそう・・・・、という見解になります。
効果のある成長因子【PRP法】
美容クリニックで行われているヴァンパイヤ美容で行われる成長因子導入方法。
なぜ、成長因子がちゃんと効果を発揮するのか、その理由を解説していきます。
PRP法は、まず自分の血液から成長因子やサイトカインを取り出します。
取り出す方法は、採取した血液を遠心分離をして、赤血球と血小板に分離します。
この血小板の方に成長因子やサイトカインが含まれているので、これを凍結乾燥し水分を抜く事で成長因子やサイトカインの活性を失わないように休眠状態にします。
これを、使用するときに美容液(これも特殊なもの)に溶解して、ダーマ―ペンなどで角層を通して肌の中に入れていきます。
AGAクリニックでも成長因子や成長因子のような働きをするペプチドを特殊な機器やダーマペンで導入していく治療方法がありますが、
・PRP法で調整した成分の成長因子の活性は失われていない(熱処理をせず、凍結乾燥をしているから)
・使う直前に水分を含む導入液に溶解して使用する(成長因子を溶解した導入液は常温での保存は不可能)
・角層を通して導入する導入液は、それ専用のもの(市販の化粧品や育毛剤ではありません)
化粧品は導入液用には作られてはいないので、ダーマペンなどを使って、肌に導入しないでください。
点滴などがわかりやすい例ですが、浸透圧も調整してあり防腐剤も配合されていません。
特殊な無菌環境で製造されるので、水が多いのに微生物の繁殖の心配がなく常温保存ができるのは、もともと無菌環境下で製造しているからなんです。
点滴の肌に塗る用と考えるとわかりやすいと思います。
普通の方法では入手はできないものですよね。
こういった特殊なものでなければ、細胞に対する悪影響が大きいので、市販の化粧品や医薬品は肌に導入することは危険な行為でしかありません。
私たちも細胞評価をするときは、試薬を使用して評価をします。
決して化粧品での評価をしているわけではありません。
まとめ
ヒト幹細胞培養液と言われるもの、肌へのプラスの効果はあると思います。
ただ、化粧品に配合されているものは次の点から疑問に思っています
・成長因子は熱に弱い
美容クリニックやAGAクリニックで使用されているのは、凍結乾燥し成長因子を休眠状態にしたものを使用。
・常温での長期保存は不可能
凍結乾燥をした成長因子を使うときに調整して使用します。
・角層をちゃんと通るの?
培養細胞を使うときは細胞がむきだし状態なので、成長因子を細胞に届けることができますが、人の身体は角層バリアがあり、成長因子が角層を通るのか疑問。
ヒト幹細胞培養液にはヒアルロン酸やアミノ酸なども含まれていると思うので、これらが肌に良い影響を与えているのではないかと考えています。
まあ、ヒアルロン酸や加水分解コラーゲンやアミノ酸など、化粧品に配合しやすい原料がありますから、それらを配合した化粧品を使えばいいのでは?と思いますが・・・・。


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